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有古ニュース  2011.6


■弁理士 畠山雅裕

「特許関連実務におけるインターネットの活用」

 言うまでもなく、近年のインターネットの発展には目覚ましいものがあり、多くの技術情報への迅速なアクセスが可能となってきている。最先端の技術が絡んでくることが多い特許の世界においては、その最先端の技術を理解するために、従来では書籍から背景技術情報等を入手していた。しかし、技術進歩の早い昨今では書籍から入手できる情報はもはや古くて役に立たない場合も多い。そこで、最先端技術の入手手段として、インターネット上の情報を利用することが必要不可欠となっている。
また、特許などの知的財産権の実務に係わる場合、国際的な視野で取り組まなければならない場合が多い。例えば、特許出願をした場合に、外国においても特許取得を考えるのは、昨今では当たり前になっている。外国への出願を考える場合、英和・和英翻訳という作業が必要となるが、その際、従来では紙の辞書を引くという地道な作業が必要であった。しかし、今日では、インターネットを利用すればこれを効率よく行うことができるのである。
更に、国内外の先行特許文献、国内外の法律、これに準ずる公的情報の入手が必要となる場合が多い。これらの情報は、その国の特許庁等が公的サービスとしてインターネット上に提供しているので、これを利用しない手はない。
近年のインターネットの飛躍的な発展と、それを支える人々及びこれを利用する人々の意識の変貌により、インターネットの利用価値は飛躍的に向上している。従って、特許関連実務においてはインターネットを利用するとしないとで、時間的のみならず質的にも大きな差が生ずることとなる。インターネット上には商業的な種々のデータベースが提供されているが、本稿では、インターネット上で無料で利用し得る種々の資源、特に外国関連特許実務において有用なものを紹介することとする。

1.インターネットの利用場面

関連特許実務においては、インターネットの利用場面は、概略的には、(1)技術内容調査、(2)外国関連事件における英和・和英翻訳、(3)先行特許文献の入手、(4)国内外の法律関連情報の入手、の4つに分けることができる。
(1)技術内容調査は、新規特許出願原稿を作成する場合や、外国出願の翻訳に際して必要となる。(2)英和・和英翻訳は、国内出願を元に外国出願する場合や、外国から日本に出願する際に必要となる。また、これらの出願の中間手続(オフィスアクション)などに際して、在外代理人との連絡書面の作成においても必要となる。
(3)先行特許文献の入手は、例えば中間手続(オフィスアクション)における引用文献の入手において必要であり、
(4)国内外の法律関連情報の入手は、国内外の法律、施行規則、審査基準などを参照したい場合に必要となる。以下、それぞれについて説明する。

2.技術内容調査

技術内容を調査する場合、一般的な検索エンジンもそれなりに利用価値があるが、技術に特化したデータベースや百科事典的なサイトで検索する方が詳しい情報が得られる場合が多い。

(1)Weblio
このサイトは、あらゆる分野の辞書を一括して引けることを目指したものである。各企業や団体が提供する専門用語辞書を横断的に検索することができ、非常に利用価値の高いものとなっている。

(2)Wikipedia
説明の必要がないほど有名なサイトであるが、内容的には誤りを含んでいる場合もあるので注意が必要である。

(3)英語版Wikipedia
Wikipedia の本家である。掲載項目数は日本版よりこちらの方が多い。

(4)CiNii
CiNii(サイニィ)は国立情報学研究所が提供するNII 論文情報ナビゲータであり、学協会刊行物・大学研究紀要・国立国会図書館の雑誌記事索引データベースなど、学術論文情報を検索の対象とする論文データベース・サービスである。他のサイトには掲載されていない最先端の技術を捜す場合に有用である。

(5)通信用語の基礎知識
WDIC CREATORS CLUB 提供の通信用語関連のオンライン辞書である。通信用語以外にも近接分野の用語も掲載されている。

(6)IT 用語辞典
株式会社インセプトが提供するオンラインIT 用語辞典である。

(7)asta*muse
株式会社パテントビューロが提供するデータベースであり、主として特許公報から集めたデータが掲載されているようである。

(8)Yahoo !百科事典
Yahoo が提供する小学館の「日本大百科事典(ニッポニカ、全26 巻)」をベースにしたオンラインの百科事典である。

(9)efunda
"eFunda" とは"engineering Fundamentals" の略で、技術情報を素早く手に入れるために開設されたそうである。英語版であるが、内容的には充実している。

(10)Chemical Book
ChemicalBook Inc. により提供されている化学製品関連のオンラインデータベースである。このサイトでは、化学構造式やCAS 番号、物理的性質、化学的性質等まで表示され、利用性の高いデータベースとなっている。化合物名の英和・和英翻訳にも利用できる。

(11)日化辞WEB
正式のデータベース名は「日本化学物質辞書」であり、(独)科学技術振興機構(JST)が提供している。

このサイトでは、簡易検索、文字列検索及び化学構造検索が可能となっている。このサイトにおいても、化学構造式やCAS 番号を調べることができ、化合物名の英和・和英翻訳にも利用できる。

3.英和・和英翻訳

インターネット上に提供されている英和・和英翻訳関連のサイトは、主として(i)辞書サイトと、(ⅱ)翻訳サイトとに分かれる。

(i)辞書サイト
英語を読む場合には、それほど多くの辞書サイトは必要ないが、英文を書く場合、色々な辞書サイトで多くの用例に当たることが、分かり易くてよい英文を書くための秘訣である。

(1)英辞郎on the WEB
このサイトは辞書サイトとして有名であり、スペースアルクから提供されている。このサイトはそのユーザが作り上げた辞書を元にし、それに手を加えて作成されたものと記憶している。この辞書の最大の利点は、収録単語、フレーズ等の数が群を抜いて多いことである。専門用語もかなり充実している。また、検索機能の設定が可能であることも利点である。また、例えば「インターネットにつなぐ」のように、翻訳したい文章の一部を入力して検索することもできる。用例が豊富であるため、その場面に適した訳語を探すことも可能である。

(2)研究社「新英和・新和英中辞典」
Weblio のサイトにおいて、研究社から提供されているオンライン辞書である。このサイトでは、英和・和英の2つが提供されており、市販の権威ある辞書をオンラインで利用することができる。用例も豊富であり、文法上の正確さを期す場合などの場合は必見である。

(3)小学館「プログレッシブ英和・和英中辞典」
Yahoo のサイトにおいて、小学館から提供されている権威あるオンライン辞書である。こちらも英和・和英の2つが提供されている。

(4)三省堂「新グローバル英和辞典」
Yahoo のサイトにおいて、三省堂から提供されている権威あるオンライン辞書である。

(5)怒涛の翻訳例辞書
グローヴァにより提供されているβ版の辞書である。β版とはいえ、有用な翻訳例が多数掲載されている。こちらも用例が豊富である。

(6)OneLook Dictionary Search
Web 上の多くの辞書を一度に引いて分野別に表示してくれるサイトである。英英辞書なので使いづらいが、外せないサイトである。

(7)FreeDictionary
FARLEX 提供の英英辞書である。この辞書は上記の「OneLook Dictionary Search」にも含まれているが、単独でも利用価値がある。

(8)学術用語対訳- 類語オンライン辞書(このサイトは現在利用不可)
国立情報学研究所が提供するサービスである。このサイトの利用価値は、専門用語の訳語が見つからない場合に、このサイトで検索することにより、それに近い訳語を見つけられることである。また、未知の用語の技術的な内容を、複数の検索結果からある程度予想できる場合もある。このサイトでは、学術用語を論文や報告書等の学術文献に付与された和英著者キーワードから機械的な処理により自動的に生成しているとのことで、一部誤りを含むことがあるとの注意書きが付されている。詳細はこのサイトの説明を御覧いただきたい。

(9)ライフサイエンス辞書
ライフサイエンス辞書プロジェクトにより古くから提供されている権威ある生化学関連のオンライン辞書である。この辞書にある「共起表現」により、その用語がどのように使用されるかを参照することができるのもメリットである。

(10)英和医学用語集
Weblio のサイトにおいて公開されている、北里大学医療衛生学部 医療情報学研究室編集の医学用語集である。

(11)研究社「英和コンピューター用語辞典」
Weblio のサイトにおいて、研究社から提供されているコンピューター関連のオンライン辞書である。

(12)Chemical Substances Database
化合物名の英訳・和訳を提供するプロの翻訳家によるオンライン辞書である。四万語を超える化合物が登録されており、頻出する化合物で登録されていないものは殆どないといえる。このデータベースの提供者によれば、利用は自己責任でとのことである。

(13)特許用語辞典
Patro Information ㈱が提供するオンライン用語集・辞典である。特に米国特許法関係の特許用語に詳しく、用例も豊富に掲載されている。

(14) horseforg(このサイトは現在利用不可)
Keypot Corporation が提供するオンラインの特許用語辞典である。

(15)特許実務用語和英辞典「第2章一般用語」
特許庁技術懇話会が提供する特許実務に関する「一般用語」のデータベースであり、英訳と解説文が掲載されている。特に日本の特許法に関連する事項を英訳する際に有用である。また、和英のみならず英和にも使用できるデータベースである。

(16) 特許実務用語和英辞典 「第1章 国内組織・職名慣例用語」
特許庁技術懇話会が提供する特許庁の「国内組織・職名慣例用語」のデータベースであり、英訳と解説文が掲載されている。こちらも、和英のみならず英和にも使用できる。

(17)Japanese Law Translation
法務省が作成する辞書データベースで、法令の翻訳に際して登場する法令用語の英語訳が提供されている。その訳語が使用されている法令名、その訳語が法令上どのように使用されているかも調べることができる。

(ⅱ)翻訳サイト
その他、単語ではなく文章を翻訳してくれる下記に示すようなサイトがある。これらのサイトによる翻訳結果はあまり当てにはならなず、そのままでは使用できるものではない。しかし、ワンパターンな翻訳に陥った場合、忘れていた別の表現を思い出すなどの効果がある。

(1)livedoor
(2)excite
(3)fresheye
(4)infoseek
(5)magicalgate
(6)worldlingo
(7)google
(8)babelfish
(9)freetranslation
(10)ocn
(11)honyaku
(12)so-net
(13)alcom
(14)nifty

4.先行特許文献

主として国内外の公官庁により提供されているサイトである。国内外の中間手続(オフィスアクション)に対応する場合に必要となる。

(1) PAJ (Patent Abstracts of Japan)
特許電子図書館(IPDL)によって提供されているデータベースについては説明の必要はないであろうが、PAJ は日本の公開公報の要約の英訳を掲載している点で異質である。この英訳は、日本での審査における引用文献の概要を外国の出願人に知らせる場合などに有用である。また、日本特許庁により引用された引用文献を対応米国出願のIDS(Information Disclosure Statement)として提出する場合に、比較的関連性の薄いものについては、ここで入手した英訳文を添付することで済ませることができる。なお、番号検索をするには、上記サイトの右上の「Number Search」をクリックして番号検索画面に移行しなければならない。

(2)esp@cenet
欧州特許庁によって提供されているデータベースである。アクセス速度が遅いのが難点であるが、
PCT の公開公報、米国特許(公開公報)もこのサイトから入手が可能となっている。

(3)PatFT & AppFT
米国特許商標庁により提供されているデータベースである。単なる公報の入手には別途ソフトをインストールする必要があるため少々面倒であり、また、ダウンロードはページ毎にする必要がある。一つの公報を一括ダウンロードしたい場合は、前述の「esp@cenet」や下記の「A FREE patent search tool」、「Google Patents」の方が手っ取り早い。但し、こちらは審査経過書類を入手できるので、その意味で利用価値がある。

(4)A FREE patent search tool
このサイトのURL の末尾が"org" なので非営利団体のサイトのようである。米国特許公報をページ毎ではなく一括ダウンロードすることができる。

(5)Google Patents
こちらでも、米国特許公報を一括ダウンロードすることができるが、公報のテキスト検索ができるので利用価値が高い。

(6)WIPO IP Services
WIPO によるPCT 出願のデータベースである。単に国際特許公報を捜す場合には、google の検索画面で公開番号又は出願番号を入力すれば、このサイトの該当ページに簡単にアクセスすることができる。

5.国内外の法律関連情報の入手

こちらも国内外の公官庁により提供されているサイトである。参照条文などにはリンクが張られていることが多いので、法令集を見るよりも素早く法律を読むことができる。

(1)法令データ提供システム
総務省が運営する総合的な行政ポータルサイト「e-Gov(イーガブ)」において提供されているデータベースである。日本の殆どの法律が電子化された状態で提供され。憲法・法律・政令・勅令・府令・省令・規則等の内容を検索することができる。

(2)Japanese Law Translation
日本の法律の英訳は、このサイトから入手可能である。英語と日本語との対訳も掲載されており、法律用語の英訳やその使い方などを参照することができる。

(3)四法の審査基準
特許法、実用新案法、意匠法、商標法の審査基準、審査便覧などは、特許庁のサイト内にあり容易にアクセスすることができる。また、工業所有権法逐条解説、各年度の改正法解説書も特許庁のサイト内にあり容易にアクセス可能である。

(4) 外国産業財産権制度情報
各国の知的財産権法の日本語訳が特許庁の上記サイトに掲載されている。また、各種条約の日本語訳も掲載されている。更に、国によっては、規則や審査便覧も掲載されているので、外国関連事件を扱う場合に非常に便利なサイトである。

6.むすび

インターネットサイトには常に正しい情報が掲載されているとは限らない。情報の信頼性を見極めるには、多角的に情報を得て比較するなどが必要である。また、そのサイトやデータベースの提供者が、信頼性のある組織・団体であるかも考慮することも重要である。更に、利用者本人も、その情報の真偽を見極めるだけの実力を伴っていることが必要である。例えば、あるサイトから入手した情報が技術者としての常識に反するかなどの判断は、まさに利用者側の実力にかかっている。
上記の各サイトの情報は現時点のものであるが、これらのサイトのURL は変更されるので、その変更にも気を付けなければならない。また、将来、もっと有用なサイトが利用可能になるかも知れないので、常にウォッチしていることが必要である。

筆者履歴

大阪大学基礎工学合成化学科卒業、同修士課程修了
企業の研究部門を経て特許事務所へ転身。
第一種情報処理技術者試験合格
国内外の化学、情報技術関連を主として担当

 

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